2024年5月19日に放送された
NHKスペシャル
「東洋医学を科学する〜鍼灸・漢方薬の新たな世界」について、
反響が大きかったようで、当院にも内容についての問い合わせをたくさんいただいており、あらためて東洋医学に対する潜在的な需要を感じているところです
放送をみて、
やっと時代が追いついてきたのだな、
日本はまだまだ遅れているな、というのが率直な感想であると同時に、これから西洋医学のいいところと東洋医学のいいところが融合されて健康増進に役立っていく、わくわくするような気持ちにもなりました
鍼灸師ならほぼ全員が、はりきゅうは効く、と肌で感じていると思うのですが、なぜ効くのかというメカニズムについて科学的に説明できる施術者がどれくらいいるでしょうか
鍼灸マッサージ師の国家試験レベルでは、ゲートコントロール説や下降抑制系・内因性オピオイドなどを用いて説明はされるのですが、それだけでは不十分であるといわざるを得ないです
これまでの日本の東洋医学研究を取り巻く環境はけっしてよいとはいえなかったと思います
僕がこの道を志したころは東洋医学を学術的に研究する大学機関は数えるほどしかなかったのでしかたなかったのかもしれません
学術的に評価される論文がほとんどなく、事例報告ばかりでエビデンスに欠け再現性も疑問符がつくものが多かったように思います
そもそも、エビデンス?RCT?二重盲検?コントロール群?となる臨床家が多かったようにも感じます
それは師匠・弟子といった封建的な徒弟制度あるいは、〇〇流、〇〇式、〇〇スタイル、のような閉鎖的な技術の伝承の影響かもしれません
効いた、やった、これでよいのだ、に終始し、なぜ効くのか、の部分には科学的なアプローチがなされず、昔の文献にこのように書いてあるから、とか、経験的に伝承されてきたものを大切に守り続ける
むしろ、気血水や東洋の神秘といったミステリアスな部分はあえて解明せず残しておいてほしいという意見もあるくらい
岡田明佑、首藤伝明といった昭和の名人はすごかったと思います
一本の鍼、ひと握りのもぐさで、辛い症状で悩める人を救ってきたのですから
しかし、令和の現在、業界団体としてもまとまりを欠き、したがって政治力もなく、国民の鍼灸受療率もなかなか上がらず、健康保険適用も中途半端なままになっているのが現状です
中国の中医学では当たり前に行われている鍼灸師による漢方薬の処方ができない現状も変えられず、(中医学では鍼灸と漢方薬は車の両輪と考えられている)
しかし、
海外の臨床家や研究者が科学的な解明を進めていることからも、逆らえない流れであることは間違いないし、このままでは優秀な人材が海外流出してしまうという事態になるかもしれません
スポーツ分野をはじめ、はりきゅうへの関心は高まっていると感じているので、ここは業界全体が発展するチャンスです
ドクターやコメディカル職種との連携も必要だし、それだけの知識・技術・人間力を僕たちが身につけなければならない時がきている
と強く感じました